長い長いメゾッド

昨日ブログ書いたあと田中宏紀の作画MADを見つけて、youtubeの動画貼るよりもこっち貼った方が良いよなあ、と思いつつ、面倒くさかったのでそのまま。


押井守パト2の演出ノート「METHODS」が届きました。復刊ドットコムで再販されているものです。アニメスタイルで連載されている「押井マニア、知ったかぶり講座!」に影響されて、つい買ってしまいました。
なんで今さらパトレイバーなのかというと、押井守の演出ノートで、今手に入るのは「イノセンス」と「パト2」だけで、映画の好き度で言ったらパト2の方が好きだから。
そのうちスカイクロラも出るのかな。出たとしても、多分買いません。というのも、今回押井守はコンテ以外の仕事には、(今までの自作品と比べたら、ですけど)あまり関わってないそうなので。押井演出に触れたい自分としては、コンテ集持ってれば十分かな、と。設定資料集は欲しいけど。
コンテにしても、過去作品に比べたらだいぶ情報量が少ないそうです、スカイクロラ。昔の押井コンテは、演出の西久保さん曰く「必要な情報は全て書き込まれている」らしく、演出いらずのスーパーコンテだったそうなのですが。今作では、なるべく他のスタッフの味を出す(だったかな)という狙いの下、書き込みを控えたとか。
METHODSですけど、演出ノートというよりは、レイアウト集。まあ押井守はなによりもレイアウトに重きを置いて作品を作る人らしいので、ここに演出の核があるといってもいいでしょう。
膨大な数のレイアウトが、押井守自身の解説(と余談)と共に収録されてます。解説は、カットが持つ意味や演出意図から、用いたレンズの種類、撮影処理の方法、消失点の位置に至るまで事細かに解説されています。
あとスタッフインタビュー。登場するのは、西久保利彦(演出)、渡部隆今敏竹内敦志荒川真嗣(レイアウト)、小倉宏昌(美術)、高橋明彦(撮影)、田中誠一(CG)、そして黄瀬和哉(作監)。これも、レイアウトの話題が中心。
やっぱりすげーなあと思ったのが、背景の小物の一つ一つにまで意味が込められていたり、それから、手前に人物が映り込む所為でほとんど画面に現れない背景まで、レイアウトが作られていて設定が存在すること。

カットの情報量というものは総体として確実に見る者に伝わるものであり、翻って細部に舞い戻った時に確かにそこに存在するものでなければなりません。

そういう細かい情報・設定が、画面の重みとなり、説得力になるんだと思います。押井作品を見ていて疲れる、と感じるのは、もしかしたらこの莫大な情報を無意識に受け取っているからなのかも。
それから、消失点の位置の重要性。これは目から鱗でした。たまたま手元にDVDがあったので、そのまま紹介してみます。
同じ運転席(コクピット)を正面から撮っていますが、上は消失点が中心、下は画面よりさらに下にとってあります。


この2つ、窓から見える景色が違いますよね。平和な日常に倦怠感を抱くしのぶさんの窓の外には、同じく渋滞に巻き込まれている車が車内まで書き込まれ、単独で調査に向かう松井さんの窓では周囲の車は隠されていて、空とビルが多く切り取られています。
同じ渋滞中の車内という状況ですけど、見せるアングルの違いによってキャラの立場、心理状態まで説明できています。すげー。
この場面ではこういう演出術とか技法が使われている、ということを知ると、映画を切り取る視点が増えて、映画を楽しむ視点が増えます。というか、好きな映画にこんな凄い演出が使われている、ってだけで嬉しくなります。
長々と書いてしまいましたが。実物(METHODS)を持ってる人には、まだ数ページしか読んでないことがばれてるんだろうなあw

「イノセンス」METHODS押井守演出ノート

「イノセンス」METHODS押井守演出ノート

案の定アマゾンにはなかったので、イノセンスの方を載っけておきます。