西澤保彦「人格転移の殺人」

1996年度のこのミス!で10位、同年のSFマガジンのベストSFで9位という風変わりな受賞歴。西澤ミステリならでわです。
今日はどうしようもなく眠かったので、さっさと寝ようと思ってたのに。読み始めたら止まらなくなって、結局読み切ってしまいました。裏表紙に「寝不足覚悟の面白さ」とありますけど、まさにその通りになってしまって、悔しいやら呆れるやら。
面白さのレベルが違います。面白いよ、といわれると、必要以上に期待しちゃって肩すかしを食らってしまうことが多い自分ですけど、西澤作品は、いつも評判以上に面白い。
西澤作品といえば、SF設定だけどミステリ的にはフェアである、っていう、独特なパズラー性の評価が高いんですが、自分はその面白さの根底には、魅力的な登場人物、ってのがあると思うんです。
西澤作品に登場するキャラクタって、本当にキャラが立ってて、言動挙動を見ているだけでも十分面白い。リアルというよりは、小説用にデフォルメを効かせたキャラクタが多いですけど、でも彼らの中の毒々しさは妙にリアルで。
冒頭のカフェでの騒乱を読めばわかるとおり、登場するのは若干たがの外れた人たちです。格好いいキャラを魅力的に描くのは簡単だろうけど、ダメ人間を魅力的に描くというのは、なかなか難しいと思います。
新書と文庫が出ていて、文庫の解説は森博嗣です。目次を開くと、「フラッシュバック<過去>」「シェイクダウン<倒壊>」などの各章題に続いてこんな見出しが。

解説 西澤ミステリィと森の距離及び角度が本格ミステリィである
                           森 博嗣

ちょ、本編より目立ってどうするんですか、森先生w

人格転移の殺人 (講談社文庫)

人格転移の殺人 (講談社文庫)