山口雅也「ミステリーズ」

95年度のこのミス!第1位の作品らしいです。作品の順位より、このミスってそんな古くからやってたんだ、ということに驚き。
全10編の短編集。中身は、著者の言葉にあるとおり。

内容は、ただ一言――
……Mysteries……
それで『ミステリーズ』という題をつけました。

このまんま。まさにミステリーズ。だけど直球のミステリはひとつもなくて、変化球だったり魔球だったり、ボール自体が違ったり。よくあるミステリ作家の短編集とは、また一線を画しています。
ちゃんとお膳立てがあって、事件があって、解決編があって、という典型的なミステリに慣れていたので、こういう変化球ばかりの作品は刺激になりました。そういえば、こういうミステリもあったよな、という感じ。
短編一つ一つが独特の世界を築いていて、まとめて感想書くのは難しいです。なので、悩んだあげく、ここは自分の好きな話ランキングをベスト3で書いてみます。
①「あなたが目撃者です」・・・ラストの衝撃、そこへの持っていき方と伏線が素晴らしい。おもわず、凄いと(小さい声で)叫んでしまったくらい。この本の中ではわりとミステリよりな短編。
②「解決ドミノ倒し」・・・どんでん返しをいっぱい書きたい、という作者の趣向。いきなり解決編から始まる作りが面白いなあと思いましたし、どんどん立場のなくなっていく探偵役が笑えた。
③「いいニュース、悪いニュース」・・・そんなところに伏線が!ラストは衝撃と共に、作者の用意周到さに呆れるばかりでした。
挙げたのはミステリ仕立てなものばかりですけど、そうでない作品も多くて、新鮮でした。分類不可能さが、森博嗣の短編集に似てるかも。

ミステリーズ《完全版》 (講談社文庫)

ミステリーズ《完全版》 (講談社文庫)