山口雅也「日本殺人事件」

第48回日本推理作家協会賞受賞作らしいです。
カリフォルニア州在住のアメリカ人作家が書いた「The JAPA MURDER CASE」を、山口雅也が翻訳出版します、という覚え書きで始まるこの作品。もちろん、そういう設定で、ということ(なはず)。
舞台は、外国人が持つ日本のイメージがそのまま具現化された、“勘違い”日本。そこにやってきたアメリカ人で日本マニアの私立探偵が、なんやかんや、という話。
目からビームの観音様、サムライが統治する民主主義というアホ設定にワクワクして読み始めたんですが、確かに見かけは勘違い日本で、だいぶ笑わしてもらったんですけど、細かい(日本人の常識外の)豆知識はちゃんとしていて、へえ、そうなんだ、という場面が結構ありました。
というか、まともな知識とアホ設定が混在してるので、自分が知らない情報が出てきたときに、ん、これはどっちなんだ・・・?と笑っていいのか納得したらいいのか、わからなくなることも多々w。
ミステリとしても、まあ協会賞を取るくらいだから、それなりのもので、それなりに度肝を抜かれました。特に(あ、これ3本の連作短編なんですけど)、2本目の密室には驚きました。トウキョー・サムでなくとも驚きます、普通。こんな解決見たことない。
3本目は普通に良かったです。流石山口雅也。作品の出来映えという意味で、ただのバカミスだと思って読む人へのある種のカウンターですね。ラストは、愛だのホトケだの国を挟んだ食い違いだのを真面目に語っていて、思わず心を打たれ、うんうんと頷かされていました。
読む前と読んだ後では、本の印象が変わります。

日本殺人事件 (創元推理文庫)

日本殺人事件 (創元推理文庫)