殊能将之「黒い仏」

出版順序としては「美濃牛」が先なんですが、手元にないので「黒い仏」を先に読みました。ちなみに殊能さんのデビュー作「ハサミ男」は読んでいます。
トンデモミステリという前評判は聞いていたので、ああ、そういうことか、という感じです。「ハサミ男」程の傑作を書いた殊能さんだから、これはギャグとして捉えてもいいのかな・・・。ミステリの常識をぶち破った怪作ではあります。
仏教の話題が中心にストーリーが進められていくのにもかかわらず、巻末の参考・引用文献が「ラヴクラフト大全集」から始まっているのは、つまりそういうことです。<くろみさま>が出てきますが、どうしても某マイメロクロミ様を思いだしてしまって、緊迫感が感じられませんでした。<くろみさま>は絶対ツンデレの黒いぬいぐるみで、グレーのバクに乗って現れるんですよ。間違いない。


以下ネタバレします。注意。
フェアな伏線を元にした模範解答→SFじみた真相というのは、乾くるみさんの「Jの神話」に近いかなあと思うんですが、事前に妖魔が登場している分、こっちの方がフェアwなのかなあとは思います。どっちにしろミステリなのは模範解答までですよね。その後は別ジャンルです。
それにしても、ノベルス裏表紙に書いてある「究極の名探偵」って誰のことですかね。石動は今回道化を演じたようにしか見えないんですが。推理に沿って事実を書き換えた星慧は、ある意味名探偵ですかね。そうでもないか。どっちにしろ究極は探偵でなくて真相です。
終わり。

黒い仏 (講談社ノベルス)

黒い仏 (講談社ノベルス)