「ドラえもん のび太の恐竜2006」

総監督:楠葉宏三
監督・絵コンテ:渡辺歩
演出:宮下新平
作画監督・キャラクターデザイン:小西賢一

ドラえもんの映画第1作目のリメイク。原作の方の「のび太の恐竜」は、スピルバーグがこの映画を見て「E.T.」のストーリーを思いついた、という逸話があるそうです。
ちょっと、ドラえもんを甘く見てました。噂には聞いていたけど、予想を遙かに上回る出来でした。この年でドラえもんに泣かされるとは・・・。


作画。線が独特なのは誰の目にも明らかなんですけど、作品全体として、この映画は絵で押し切るんだ!、という情熱が伝わってきました。原画は、若手からベテランまでの精鋭揃いで、どのカットをとっても凄い。印象深いのは、宮澤康紀さんの一同が砂から這い上がるシーンと、橋本晋治さんのティラノ襲撃シーン、それから森久司さんのティラノvsアラモサウルス・・・挙げればキリ無いですけど。

橋本晋治のティラノ。塗りではなく、線で書かれた火に注目。

宮澤康紀の砂脱出。砂が下に埋まってる人の形になるのは、宮澤さんのアドリブらしい。
あとしずかちゃんのシャワーがいつになくエロかったw。監督曰く、もっとエロくするつもりだったらしい。インタビューで熱く語ってます。


演出。素晴らしい。コンテは「帰ってきたドラえもん」「のび太結婚前夜」でおなじみの、監督・渡辺歩。前半の旅立ち前のパートなんか、それらしい部分もいくつか見られます。のび太のパパが、枕元に座って話しかけるシーンなんかは特に。ああ、ここは大人に向けて話しているんだな、とふと思いました。
のび太の部屋の本棚にある本のタイトルが、面白いんです。まず目を引くのが「王蟲大解剖」。そんなことして良いのかw。あとは「世界の苔」とか「カニvsエビ」とか。インタビューを読んだら、「○○の謎」のようなタイトルが多いのは、人の愚劣な部分、知りたい欲求の様な俗物性が感じられるタイトルを並べて、そういうものにピー助が晒されている、またのび太もそういうものを理解している、ということを表現したかったんだそうです。深い。
本のタイトルとか、あとは店の名前、商品名なんかは、演出の手が入りやすい部分、また遊びの多い部分でもあるので、出てきたら注目して見るようにしてます。


美術も凄くて、街並みとかのび太の部屋も凝ってます。机が事務机から木の勉強机に変わったのはいつなんだろう。そういえば部屋のレイアウトも変わりましたよね。あとは、タケコプターの躍動感も凄かった。あと、ドラえもんのヒゲに影が付くのを始めて見ました。

監督の渡辺歩さんと作監小西賢一さんのインタビューがアニスタで読めるのでそちらも是非。映画館に見に来たお客さんは、20年前の元の劇ドラを見てた人も多かったらしいです。その人たちの、今作の満足度が93%だったらしい。これって凄いですよね。普通、昔の記憶って美化してしまうものだし、20年前を知ってる人たちって今は大人だから、積極的に楽しもうとは思わないはずなのに。この点が1番、この作品の凄さを表してるんじゃないでしょうか。