漫画感想まとめ
ついったーのログから引っ張り出してきた漫画感想を、改めて(多少の加筆をして)まとめました。
衿沢世衣子「向こう町ガール八景」
面白いし上手い(絵のことじゃないです)。サボって動物園行く「だけ」とか、環境問題についての課題をやる「だけ」とか、くだらない話が多いのに、でもふとした拍子にドキッしたりハッとしたりする。シュールさは飾りです。
- 作者: 衿沢世衣子
- 出版社/メーカー: 青林工藝舎
- 発売日: 2006/03/25
- メディア: コミック
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釣巻和「くおんの森」2巻
1巻は得体の知れない漫画な印象だったのに、読む方が慣れたのか描く方が慣れたのかわからんけど、ずいぶんと丸くなって読みやすくなった感じです。シュチュエーションや話の展開は、言ってしまえばよくある不思議な話系で、目新しさはあまりないです。でも作風と題材の相性が抜群で、「飲まれる」感覚が心地いい。
- 作者: 釣巻和
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/01/13
- メディア: コミック
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今井哲也「ハックス!」
背動始めそうな背景とか好き。やっぱり台詞の書き方とかなんとなく進んでいくあたりから「がらくたストリート」と同じ匂いがします。というかオタクの描写の的確さには吹いた。そうそう、他の漫画の誇張されたオタク像よりも、こっちの方がずっとしっくり来ます。
アニメを作る!というある種青春だったりスポ根だったりするようなお決まりの展開、ではなく、ゆるゆるとコメディタッチで進んで行く感じは新鮮でした。
- 作者: 今井哲也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/21
- メディア: コミック
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岩岡ヒサエ「星が原あおまんじゅうの森」
人外相手のHOLiC、だけどHOLiCよりも黒い。こういう刺さるような黒さが岩岡ヒサエさんっぽいというのかなあ。可愛い絵柄でやるから余計に来る。西島大介ほどの真っ直ぐさはないけど、それでも。いい話との緩急、バランスもまた良いのかも知れません。そんな自分はみどりさんの話が好き。ちなみに野分の話は嫌いです(笑)。
(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) 星が原あおまんじゅうの森 1
- 作者: 岩岡ヒサエ
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/12/04
- メディア: コミック
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小橋ちず「Sweep!!」
ギャグを緩めたヒャッコみたいな感じ、って言ったら誰かに怒られそう。主人公だけしっかり訛った方言喋ってたり、駅とかコンビニとかの描写だったりに、すごくリアルな田舎を感じます。これ以降はっきりとしたスポーツ漫画になってしまうのか、この雰囲気のままで進むのか、まだ分からないけど、少なくとも1巻は面白かったです。あと最初の頃の里子は真琴にしか見えなかった、ていうか仲里依紗ボイスでずっと脳内再生されてました。映像化の際は是非。
- 作者: 小橋ちず
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: コミック
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豊田徹也「珈琲時間」
面白かった。普通の単行本の厚さで17話収録、ていう短さが良い。詰まっているし、それでいてキレているし。表情とかポーズとか構図に、読者の視線、そして「時間」への意識がはっきりと感じられます。まるで短編映画でも見せられている感じ(実際そういう話もあるんですけど)。もっとゆっくり読めばよかった。「うそつき博士」のモノクルの位置がポスターと逆なのは伏線かな。伏線だとしたら、探せばもっと色々出てくるのかも。
- 作者: 豊田徹也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/22
- メディア: コミック
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ちゅーぶら
ちゅーぶら#3
脚本:G・TOMAHAWK、絵コンテ:有明功一、演出:吉村愛、作監:安田京弘、村上真紀、谷津美弥子
これは「下着はエロくない」という主人公を中心に話が進むアニメなわけですが、その主人公の対立勢力として、イジメトリオや手芸部の先生に代表される一般的な感性が出てきました。そしてこのアニメを「エロい」と見る視聴者もまた、そんな一般的な感性を持つ敵方に属する人間なのだと言えます。
素直に主人公サイドに感情移入するのであれば、このアニメは「エロくない」という、主人公と同じ立場に立てるはずなのだけど、それは実際マイノリティだと作品内でも言っているわけで、現実にこれを「エロい」と捉え、敵側に回ってしまう視聴者が多いのも当たり前といえば当たり前なのかも。
その感性や先入観を打破していくのがちゅーぶら内における物語のテーマでもあるし、打破出来るかどうかがちゅーぶらという作品自体が抱えている課題なのでは、と思いました。
2009年テレビアニメ、漫画
ふとした思いつきで、昨年のテレビアニメで面白かった10作品を選出。というか宙まにを見ていたら、こんな面白い作品を忘れていたなんて!という発作を起こしてしまったのです。消費のスピードが上がっているとはいえまだ1月、2009年を振り返ってもギリギリ許されるよね。
ちゃんと見ていれば、『NEEDLESS』『青い花』『WHITE ALBUM』『真マジンガー 衝撃! Z編』等は入ってくるはず。しかしまあ、見てないものはしょうがない。タイトルを並べて見ると、わりとミーハーっぽいかも。いやただのミーハーですけど。
ついでに昨年読んだ漫画で面白かった10作品もやってみます。
衝撃を受けた、打ち震えたという意味では上の2作品がダントツなのだけど、他も面白かったです。それにしても有名ランキング雑誌でぱにぽにが取り上げられないのは不思議。これこそ「今」選ぶべき作品だと思うのに。
とは言うものの、大して数を読んでいないので説得力の欠片もありません。こちらは、こういう漫画を最近読んでますよーという自己満足ランキングでした。
ダンパイア、おまもり
ダンパイア#1
脚本:吉野弘幸、絵コンテ:MEIMU、演出:龍輪直征、作監:福世孝明、田中穣、高野晃久
中途半端。テロップワークとかCM前後の演出とか小ネタはしっかり入っているのだけど、肝心のカメラワークとか構成、キャラクタが実写のバラエティ番組のそれに成りきれておらず、ただの「アニメの中の実写バラエティ番組」でしかなかったように見えました。そのギミック1本で30分押し切るという「主張」をするのであれば、もっと頑張ってもよかったのになあ。という酷評でした。
ただ、屋上に出てからの「どこに何台カメラあるんだよ!」とか、手ブレが良いレイアウトを決めるとか、それまで不完全ながらも形式上守ってきた実写演出の手法が、実写という体の上で行われるアニメ的な演出へと移り変わってゆく作りなんかはとても面白かったし、それから久しぶりの見下すような悠木ボイスも素敵でした。実写演出に対して不満がある以外は、試みとしても話としても良いと思います。
EDはちょっと葉月さんのことを思い出した。絵に力があれば、たとえ1枚絵のスライドでも十分EDとして成り立ちますよね。今「月詠」のED流したら、きっと未完成って言われるんだろうなあ。
ひだまり☆☆☆
ひだまり☆☆☆#1
脚本:与口奈津江、絵コンテ:進藤里子、演出:宮本幸裕、作監:伊東良明、杉山延寛、西田美弥子
原作の追試の回と引越しの回。地声の小見川さんの破壊力と言ったらない。ダメだ、何度聞いてもニヤケて、否笑ってしまう。良いなあ。
受けた印象は、2期1話(尾石回)+七夕回(帆村回)。正しいひだまりの1話です。Aパートは特に七夕回のイメージが強め。でも、各カットの背景のアイディアや小ネタは進化してるなあ。今までは「ひだまりの文法」にのっとって、半ばベルトコンベア的に画面を作っていた印象があったのだけど(酷い)、今回は色んな新しい「文法」が見れて楽しかった。これが他のSHAFT作品からの輸入ではなく、独自に進化している感が合ったのが好印象で、いつもよりいっそう華やかに見えました。
撮影でない、作画によるカメラの前後動(背動)の頻用は最近のSHAFT作品の特徴でしょうか。とにかく、隙あらば動かす。これは個人的には上の七夕回以降じわじわと増えていったような印象があって、聞いた話によると昔の新房作品でもよく使われていたそうな。最近の新房作品が回帰的と言われるのはこの辺に原因の一角がありそうです。
どうでもいいですが、こういうOPEDを見て「未完成」と断言してしまうのは安直すぎませんか。実際そうなんでしょうけど、そろそろこの「OPEDは動いてナンボ」という先入観を利用したOPEDが出てくる気がします。☆☆☆なんかはこれで十分EDになる気がするんだけどなあ。
れでぃばと、ちゅーぶら、ギャグ日、ソラノヲト
ここだけ見てる、という人はいないでしょうが、お久しぶりの更新です。twitterで生きています。最終回感想を書こうと思って書き出したのに、新番感想書いたら気力が尽きてしまいました。最終回はまた今度にします。
れでぃばと#1
脚本:玉井☆豪、絵コンテ:大槻敦史、演出:黒田幸生、作監:高見明男
見事に高見明男さんのアニメになっていたなあ、と。エロくてエロくて、そしてエロくて・・・。金髪ドリルが泣くとこと、すぐ泣くメイドさんが好きです。基本的にラノベ主人公ラノベ展開が苦手な自分は、主人公が出てきた時点で、もうダメでした。そういえば女性視点のアニメが増えている気がします。
ちゅーぶら#1
脚本:吉田玲子、絵コンテ:ひいろゆきな、演出:磨積良亜澄、作監:谷津美弥子
今のところこれが一番面白い(除くひだまり)。オチがバレバレだったり物語に起伏が無かったりする、単純にキャラだけ見てればいいアニメ。ARIAとかうみもの、いうなればささめきに近いものを感じました、と言ったら怒られましたけど。
これをパンツアニメというのは間違いです。いや字面は間違ってませんけど、少なくともエロではない。下着の描写をエロくしないように、という方針でもあるのかなあ。カットによっては行き届いてないものもありましたし、どうやってもエロくなるカットとかもありましたけど、基本的に下着にエロさは感じられません。これを見てパンツおっぱいと騒ぐのは調教され過ぎだと思います。
作画はちらほら良くて、覚えているのは階段を降りるところの足のアップ、それから終盤の胸のアップ。EDのコンテ演出が室井ふみえさんで、原画にはキャシャーンSinsEDでも描いていた奥田佳子さん。良いですなあ。
ギャグ日4#1
演出作画:かどともあき
テンションはいつもどおりで一安心。OPはおなじみ長濱博史に馬越嘉彦。このコンビをまた拝めるのはギャグ日の強みだし、蟲師ファンには嬉しい限り。そのOPも最高でした。
ソラノヲト#1
脚本:吉野弘幸、絵コンテ演出:神戸守、作監:赤井俊文
あれとかそれとか言ったら負けな気がするので言いませんよ。でも言うほど「けいおん」、というより堀口さんじみていなかったのが良かったなあ。ちゃんと赤井俊文さんの絵だった。
神話の件とか、儀式の件とか、おおこれを1話でやってしまうのか、と驚いた要素もいくつか。こいつらはもうちょっと小出しにして引っ張って、中〜後半でやった方が引き立つエピソードではある気がします。バックグラウンドやら世界観をきっちり説明してしまった上で、今後どういう方向へ向かっていくのか。さっぱり見当がつかなくなったという点で言えば、こういう作りもまた面白いのかな、と思いました。
演出に関しては、空間とか光を意識したレイアウトや演出。キャッチーで若者にウケそうな感じ、・・・って何様だ。画面に明確な意図を込めるというよりは、単純に感覚的な見栄えを求めているように見えました。作画は1話クオリティで、頑張ってはいたけど、1話にしては・・・、っていう感じもします。
冒頭で全滅エンドを予想した自分は人として軸がぶれている。今見ると「灰羽連盟」はわかる気がします。
STRONG WORLD
『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』見てきました。
まず思ったのは「豪華な映画だなあ」ということ。事前に知識もあったのでそういう映画になっていることは知っていましたが、画面を見て改めてそれを実感しました。制作総指揮尾田栄一郎は伊達じゃないです。
まず度肝を抜かれるのはロビンの美人さ(笑)。原作に極力近づける、という今回のキャラデザですけど、これほどまでに見違えるとは。それから服がコロコロ変わるのも印象的でした。討ち入りシーンなんて、着替えてる暇あったのかお前ら、と突っ込みたくもなります。
動物を描く、というのがこの映画のキーワードだと思います。「鳥になりたいんじゃない?」はロマンチックなセリフだなあと思ったけど、ああいう形で回収されたのはびっくりしました。おそらくお子様の半数も「ええーっ!」てなったと思うのだけど、ワンピ的にはありなのかな。
そして一番の注目は、やっぱり討ち入りシーン。面白いのは、シキ側が純和風の舞台、手続きを踏んで「誓いの杯」を交わそうとしているところへ、スーツ姿のルフィたちがあろうことか重火器を持って乱入してくるという異質な感じ、ゴチャ混ぜ感。まさにハリウッド!な感じがしました。
極めつけは、ルフィ一行が襖の向こうに揃い踏むシーンで、スポットライト的な効果を出すためにシキ側の照明が落ちる演出。完全に物語を無視したこの演出、もう笑うしかありませんでした。ここは徹底的に盛りあげようっていう気概がピリピリ伝わってきましたし、むしろ、このシーンがやりたかっただけなんじゃないの?という感じもあり。とにかく、この映画一番の見所です。
作画はまず、モブ海兵がところ狭しと動くアバンがすごかった。そしてルフィと動物たちの数分続くバトルを経て、全部作画のOPが来る。ここでもうお腹いっぱいです。作画としての一番の盛り上がりはラストバトルではなくルフィがギア2を使い始める周辺。表情芝居が良かったし話としても盛り上がるところです。それからルフィ対シキの空中戦もすごかった。
ラストのキャシャーンがかったギガントトールアックス(だっけ?)は馬越さんかな。大西さんはナミが奪われる直前のバトルだと思ったんですけど、どうだろう。それ以外は全然わかりませんでした。特徴的だな、って思えるシーンはいくつもあったのですけど。エフェクトといえば煙がやたら多かった。ぬるっとした煙はどこだったかな。中でも浮いていたのはギア2の周辺。とにかく見どころはたくさんあります。作画アニメと言っても遜色ないでしょう。
原画は馬越さんは事前に聞いていました。とにかく人数が多かったので把握しきれませんでしたが、記憶にあるのは黒柳賢治、いとうまりこ、奥野浩行、大西亮、舘直樹、馬場充子、沼田誠也、敬称略。パンフに載ってないのが痛いです。各パートでだいぶ毛色が違うなあ、と思ったらやっぱり複数コンテでした。
それにしても、今年はサマウォしかりヱヴァしかり、こういうエンタメ一直線の映画がよく注目を集めますな。それぞれ事情は違えど、同じように括られる映画が揃い踏むというのは、なかなか面白いものがあります。